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小森陽一先生の最終講義@東京大学駒場地区キャンパス18号館

小森陽一先生:Soseki21ブログ

※写真撮影可ということでしたので掲載いたしました。肖像権など問題がありましたらご連絡ください。

 

恩師の最終講義を聴講するために、3月8日、はじめて東京大学駒場キャンパスに足を運びました。「こりゃすげえや」と。文字で書いていると薄っぺらいのだけど、実際に足を運ぶと巨大な「権威の重圧」がある。なかなか18号館にたどり着けなかったのだけれど(帰りはさっと帰れた)、その構造も東大的。

最終講義のホールは階段教室になっていて、参加者は年齢層が超高めでした。立ち見状態で、後からきた学生が困惑していて申し訳なかったです。きみたちに聴いてほしい講義なのに。一般公開されていたので、どうやら先生のゼミ生だけでなく、駒場近辺在住の「意識高い系シニア」の常連さんがいた模様。

小森陽一先生の話では、時代とシンクロさせ、新聞の記事の内容を読者に想起させる「新聞小説家」漱石の話がまず興味深かった。作家=小説(=)新聞=読者というメディアと読み手が連携して、はじめて内容が分かるテクニックを使っていて、ある意味、漱石はメディア小説家といえるかもしれません。

漱石の小説作法を現代に投影してみると、おそらくブログやツイッターで社会事例を示唆するような記事を日々連投する手法になるでしょう。ブログで社会を批判しているひとはたくさんいますが、そのものズバリ引用している。その投稿を「文芸レベル」まで高めている「創作者」はいないのでは。

次に面白かったのは、戦争と政治が結びついた後に産業として「金」を生み、その手順をうまく踏んだものが漱石の時代には「勝ち組」だったという構造が、漱石のあらゆる著作の登場人物に使われ、変奏されていること。これは小森先生が講義でお話されていた通り、現在のモリカケ問題にも通じます。

軍需産業が金を生むため社会を歪ませる構造は、漱石の時代に限らず、現在にも根強いと感じます。戦争=政治=産業という結びつきは現代にもある。危険を孕んでいる。たとえばFacebookは個人情報のデータを政治に利用した疑惑が波紋を呼び、Google社員はAIの軍事利用に反発しました。情報産業が危うい。

ただ、現在の一流大手企業を眺めてみると、かつて戦闘機を作ったり大砲を作ったりしていた企業が多いのではないか。インターネット、サイバーセキュリティ、AIなどの技術についても「金に目がくらんで儲け主義に陥る、国家に脅されるなり甘い声をかけられたら」ころっと軍需産業になる可能性がある。

「Don't be evil」のようなプライドや理念、技術を平和利用する矜持が必要だと思いますね。貧困や格差に我慢できなくなって「こうなりゃ、金儲けのために戦争だ!」と国家レベルで考えている政治家が多いのではないか?その暴挙を阻止する政治家が求められ、さらに21世紀の漱石が必要だと考えます。

大学時代の恩師である小森陽一先生の最終講義を聴講して、そんなことを考えました。先生は『戦争の時代と夏目漱石』(同名の著書もある)と題された講義の最後で、退官された後は「戦争のない平和な日本にするために残りの人生を捧げたい」という宣言で締めくくりました。かっこよかったな。同感です。

ところで、どーでもいいことなんですけど。小森先生の最終講義で、大学時代のしゅーちゃんという友人と再会したのですが、学生の頃と何も変わっていない容貌で、びっくらこいた。「彼は何か不老不死のクスリでも飲んでるのではないか?」と真剣にかんぐりました。最後に握手とハグして別れました。

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小森陽一先生、ご退官おめでとうございます。

先生の最終講義は、ひとことも聞き漏らさずに集中して拝聴し、ノートをとらせていただきました。一瞬、不覚にも涙がこぼれそうになりました。

しかしながら、自分にとって、現在もまだ小森ゼミは継続しているつもりでおります。これからのご活躍を楽しみにしております。

 

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戦争の時代と夏目漱石

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