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つぶやきのまとめ。とりとめのない思考を書き綴っています。

『花とアリス殺人事件』とロトスコープ、岩井俊二監督に嫉妬するなど。

花とアリス殺人事件

 

傷つけるつもりはないのに傷つけてしまい、他人を傷つけることによって自分も傷ついてしまう。にんげんって、そんなものではないかと思います。

誰かを傷つける行為にしても動機にしても、ほんの些細なことだったりして、あとから考えるとたいしたことではない。けれどもたいしたことじゃないことにこだわり、こじれさせ、ひとりで悩む。膝を抱えて引きこもってしまう。他人にとってはたいしたことじゃなかったとしても、本人には充分に「たいしたこと」なんですよね。やさしいにんげんほど自責の念も強い。

特に子どもの頃には、そうした無邪気な行為が思いのほかおおきな出来事に発展して、自分でもそんなつもりじゃなかったのに、と焦ったりするものです。子どもに限らないかもしれない。おそらく報道される事件の加害者だって、いじめだって、そんなことになるとは思わなかったのに、と考えている人間が多いのではないか。もちろん念密な計画を立てて、思った通りにことが運んでしめしめと思う人間もいるかもしれないけれど。

岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』を観て、そんなことを感じました。

この映画、アニメですけれども、泣けましたね。

といってもぼくは、アクション映画以外のたいていの映画を観て泣いてしまう。涙腺が緩みすぎ。もしくは年を取ってしまった前頭葉の働きに問題があるのかもしれん。そんなことはどーでもよいのだが、日常に潜む「残酷さ」と「少女」を描かせたら、日本の監督では、岩井俊二監督が最高だと思います。

悔しいのは脚本や監督だけでなく、映画音楽の作詞・作曲とノベライズ(小説化)までされていることですね。室内楽というか弦楽四重奏のような音楽を作られるのだけれど、それがこころに沁みる。どんだけ才能があるんだか、という感じ。

岩井俊二監督は才能に嫉妬する監督のひとりでもあります。ルックスもかっこいいし。

ほんらいであれば映像と物語と音楽は一体化しているはずで、もちろん分業化することによって商業的な作品として完成されます。エンドロールにはたくさんのクリエイターや関係者の名前が連なる。けれども、その「核」となる感動を創ることができるのはひとりの才能ある人間であって、それが岩井俊二監督だと考えています。

ぼくが岩井俊二監督の作品で初めて観た映画は『リリィ・シュシュのすべて』でした。

この作品を観て、身体とこころがえぐられるような衝撃を受けました。岩井監督の作品は「ふつうの人間が無意識に他者をいじめてしまう」感覚を、ものすごく繊細かつ的確に描いていると思う。途方もない映像美を駆使して。

リリィ・シュシュのすべて』には、あまりにも衝撃を受けて思わずDVDを購入してしまいました。あの美しくて切ない映像を、どうしてもパッケージとして所有しておきたかったからです。しかしながら、怖くて1度も見直していません。人間の残酷さを究めると極限の美になるのだな、と岩井監督の作品を観るといつも感じる。『リップヴァンウィンクルの花嫁』も同様です。あの作品もよかった。

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黒木華、綾野剛ら出演!映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』予告編

花とアリス』に関していえば、ぼくは実写による『花とアリス』も観ています。そのときにはあまり存在感がなかったし、実は『リリィ・シュシュのすべて』にも出演されていたのだけれど、蒼井優さんという女優さんがぼくは好みです。どこが?と言われると困るし、どこにでもいるような女性という気がします。けれども気になる。特にこの作品ではアリスの声を担当されていますが、まさに蒼井優さんが適任だと感じました。アリスは蒼井優さんでなければいけない。

アニメによる『花とアリス殺人事件』も実写版の『花とアリス』同様、花は鈴木杏さん、アリス(有栖川)は蒼井優さん。ロリコン趣味はないけれど、中学生で14歳という年齢は大人と子どもが混在する時期です。アリスの結んだ子どもっぽい髪型と、ほどいたときに大人っぽくなる髪型がいい。

物語のなかで有栖川の夫婦は離婚しているのだけれど、アリスはお父さんに面会に行くときに髪をほどきます。そのお父さんはなんだかうだつのあがらないおっさんなのだけれども、アリスはきっとお父さんのために少しだけ背伸びをして、髪をほどいてデートに臨むんだろうな、と感じました。


映画『花とアリス殺人事件』予告編

そもそもぼくはあまりアニメに関心がなく、けれども最近になっていろいろと見始めているのだけれど、この作品に興味をいだいたのは「ロトスコープ」という技法が使われていることをふとしたきっかけで知ったからでした。

Twitterに、ぱらぱら漫画を制作している漫画家さんがいらっしゃって、パラパラ漫画ってロトスコープっぽいな、と思ったのがきっかけです。ロトスコープという技法は、実写をわざわざトレースして着色して、アニメーションにする技法をいいます。

ところで、なぜそんなロトスコープなどという技法をぼくが知っているかといえば、遠い昔に、キアヌ・リーヴスが主演の『A Scanner Darkly』という作品を渋谷の劇場に観に行ったことがあったからでした。

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この作品はフィリップ・K・ディックが原作なんですが、幻想と現実の入り混じった風景を描く意味でロトスコープが採用され、当時としては初めて全作ロトスコープで制作した作品!として話題になっていた(なっていなかったような気もする)映画でした。

率直に感想を述べると「別にロトスコープじゃなくてもいいんじゃね?」というか、せっかくのキアヌ主演なのに、いまいち絵画化されてしまってコミックっぽい映像だったので、あまり満足できなかったことを思い出します。

で、さらになぜそんなマイナーな作品を渋谷の劇場まで観に行ったかといえば、この音楽にレディオヘッドトム・ヨークのソロアルバムから「Black Swan」という曲が使われていたからなんですね。ロトスコープトム・ヨークの挿入曲のために、わざわざ渋谷まで足を運んだのかい!と言われたら、その通りでございます。

ちなみにトム・ヨークが「Black Swan」をライブで演奏している映像をYouTubeでいくつかみつけたのですが、どれもうまく演奏できていないくて、途中でやめちゃったり、やり直している曲が多い。これは、ライブ向きの曲ではない気がします。以下の映像では、なんとベースを弾きながら、ラップトップミュージックに合わせて演奏しているのですが、途中でうまくいかなくてやり直しています。


Thom Yorke - Black Swan – Live in Oakland

トム・ヨークらしくてよいと思うのですが。

ところで話を戻して、実写をトレースしてスケッチのような映像にする、ということから、MTV世代のおっさんが思い出してしまうのはa-haの『Take On Me』のMVですね。女の子がコミックのなかの世界に引き込まれてしまうという物語の映像です。若かりし頃に深夜の番組からビデオ「テープ」に録画して、擦り切れるほど観ました。デュラン・デュランなどと一緒に。


a-ha - Take On Me (Official 4K Music Video)

ロトスコープといえるのかどうか自分には分かりませんが、懐かしい。

ちなみにスマホで撮影した動画をロトスコープのようにできるアプリとしてArtmationがあります。フレームレート(画像が1秒間に表示される枚数)や、描画の密度を高めに設定すると数秒の動画を1時間あまりもレンダリングしていることがあって、その部分では忍耐力がもとめられるアプリなのですが、面白い映像を作ることができます。

2年ほど前からあったアプリなので、それほど新しくありませんがiOS版は以下になります。

Artomaton お絵描き人工知能

Artomaton お絵描き人工知能

  • futurala
  • 写真/ビデオ
  • 無料

apps.apple.com

弾き語り映像をArtmatiionで鉛筆画風に加工してみたことがありました。

花とアリス殺人事件』から話がずいぶん離れてしまいましたが、あの作品では、ロトスコープが使われているとはいえ、どこまでがロトスコープでどこからがアニメとして描かれたものかよく分かりませんでした。おそらく風景は実写をロトスコープでトレースや彩色したものでしょう。ロトスコープ部分とアニメをうまく融合させています。

という技術的な話はともかく、岩井俊二監督としては、はじめての長編アニメの制作だったようですが『花とアリス』という作品から派生した作品というより、単体で楽しめる作品であり、アニメならではの面白さを感じました。

岩井俊二監督が手掛ける次の「アニメ」作品にも期待しちゃいます。