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つぶやきのまとめ。とりとめのない思考を書き綴っています。

小説を書いてみようと思った。なので書いてみた。

ノートに書く女性:Soseki21ブログ

このブログでは「ノード」というネットワークの用語と、易経の陰陽による世界観を使って物語の構造について考察してきたのですが、最終的には漱石の『文学論』のような位置づけにするつもりでした。つまり理論編を構築した上で、実践編として「小説を書く」流れにしようと考えていたわけです。

夏目漱石は三角関係のレンアイを扱ったどろどろした小説家のように思われがちです。事実「こころ」にしても「それから」にしても、端的に言ってしまえば「略奪愛」を描いた作品といえます。強引かもしれませんが。

こころ

こころ

 
それから

それから

 

しかしながら、略奪愛のような小説を書く以前、もう少し具体的にはイギリス留学後に帰国したアラサー(というかアラフォー?)の夏目漱石は、大学で講師をしながら科学的な視点から文学を理論化する試みに挑戦していました。東京帝国大学における文学理論に関する講義をまとめた著作が『文学論』です。

この著作は講義録になるはずで、中川芳太郎という優秀な教え子にとらせたノートを原稿化しようとしたようです。

ところが原稿としてまとめるにあたって、漱石は納得がいかなくなって、3分の2を書き換えてしまった。若き漱石にとっては、それぐらいこだわりがあった文学論でした。中川芳太郎にとっては「なんだよセンセイ。そりゃねえだろ」と思ったのではないか。いや、ぼくならそう思う。

漱石が『文学論』で提示した理論は基本的にシンプルで、文学における認識を「F+f」という公式で整理しています。この辺りのセンスは素晴らしい。

「F」とはフォーカス(Focus)つまり焦点化です。最初の大文字のFは「印象又は観念」に対する焦点化、次の小文字のfは「情緒」に関する焦点化です。

記号論的もしくは言語学的にいえばシニフィアン(signifiant)」と「シニフィエ(signifié)」のようなものかもしれません(ちょっと違うけど)。

たとえば記号論の場合は「花」という記号では、漢字による花や音読による「はな」がシニフィアンであって、記号から思い浮かべる花の概念や具体的なイメージがシニフィエです。

漱石の文学論でいえば、花という文学的描写がFで、その描写によって枯れてしまう儚さ、艶美、穏やかな感情などが情緒のfになる、と解釈しています。さらにF+fは幾重もの「波動」を描いて文学の書く/読む行為によって生成されるものであり、人間の意識は文学を読む中で「F+f」の波動のゆらぎによってもたらされる。驚くべき執拗さで、漱石は文学の焦点を類型化し、英文例を挙げて解説します。

ぼくは学生の頃に、神保町の古本屋で単体で購入した岩波の漱石全集の『文学論』と、その後、社会人になって御茶ノ水丸善で買いそろえた新しい漱石全集の『文学論』を持っていますが、持っているだけで読破できませんでした。

現在では岩波文庫になっているようではないですか。いやーこれは誰も買わないのではなかろうか。ぼくはほしいけど。

文学論〈上〉 (岩波文庫)

文学論〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者:夏目 漱石
  • 発売日: 2007/02/16
  • メディア: 文庫
 
文学論 (下) (岩波文庫)

文学論 (下) (岩波文庫)

 

漱石の『文学論』はめっちゃ難解だし、率直にいってつまんない書物です。Pythonなどのプログラミングの技術解説書よりずっと難しい。さらにPythonの解説書であれば実用的ですが、文学論は使いみちがないので現実的な価値はありません。数ページを読んでめげます。いま読み直しているところですが、最初から読もうとしないで、ぱっとひらいたページをザッピングして読んでいます。

しかし、こういう途方もなくつまんない理論を考え続けた人間だからこそ『吾輩は猫である』のような猫の視点から人間の滑稽さを描く、現代風にいえば異世界転生みたいな、ぶっとんだ小説を描くことが可能だったのでは?と考えています。

吾輩は猫である

吾輩は猫である

 

アフターコロナで自粛から解放されてハイになっちゃうことは、ある意味、文学論で理論を突き詰めた漱石が奇想天外な小説に活路をひらいた状況と同じかもしれません。科学的理論に引きこもった漱石だからこそ、創造力の扉をひらいたのではないか。

 ■

いつもどおり前書きが長くなりました。

自分も漱石のように個人的な文学理論を構築した上で小説を書こうと思っていたわけですが、はてなで小説を書かれているブロガーさんの記事を久し振りに拝見して「小説の創作、面白そうじゃん」と思いました。コメントさせていただいたのだけれど「自分ならどうするか?」を考えていたところ、ちょっと書いてみるか、と。

そんなわけで800文字ぐらい(400文字原稿用紙2枚ほど)冒頭部分を書いた小説を公開します。やはり小説は縦書きでしょう。はてなに縦書きテンプレはあるのだろうか。CSSをいじればテキストの縦書き表示も可能かと思いますが、面倒くさいので画像で貼ってみます。

小説サンプル1:Soseki21ブログ

小説サンプル2:Soseki21ブログ

画像にしたので直せないのですが、句読点の誤字ありました。「誤)正確にいえば。→正)正確にいえば、」になります。スマホでは読めない可能性があるので、テキストでも流し込みしてみます。こちらは誤字を修正済みです(さらに誤字を発見する可能性もありますが、とりあえずこれはサンプルということで)。

 

誹謗と無謀、希望のなかの野望。

 

イントロダクション #00

 

雷鳴が轟いている。大雨も降り出した。

わたしは暗い部屋のなかで、あかりも点けずに明滅する暗闇をみつめていた。

どっどうという雨の音にかき消されて、外の音は聞こえない。数日前から救急車のサイレンの音も少なくなっていたけれど、もしかするとまだ東京のどこかでは、倒れたひとを載せて病院に誰かを運ぶクルマが走っているのかもしれないね。

数日前、わたしも救急車に乗った。

腕に巻かれた血圧計が締め付ける痛み。深夜に救急の外来を受け付けてくれる病院を探してアイドリングのまま待機する時間。狭い車内に横たわったわたしは、寝台に拘束されていた。さながらガリバーのようだった。幼い頃に読んだ絵本を思い出す。こんなときなのに。けれどもたいていのことは、必要のないときに思い出すもの。

わたしの身体は大きくない。正確にいえば、わたしの身長は157センチ。Tシャツの上でちいさな胸が、鼓動に合わせて波打つのが分かる。とっさのことだったけれど、パジャマから着替える時間はあった。下着も替えた。よく分からないけれど、何があってもよいように。

「樫村ひよりさん、一九九六年九月二十五日生まれでいいですね?」

「はい」

わたしは答えた。マスクをかけた救急隊員のひとが訊いて手を握った。

「少し汗ばんでいるようです。大丈夫ですか」

「大丈夫、だと、思います」

息を整えながら私は答える。微笑もうと思ったけれど、頬がこわばってうまくいかなかった。汗臭くないかな、わたし。ほんとに大丈夫なの? ちょっと気になった。

「ご職業は」

わたしはつばを飲み込んだ。目の前が暗くなった。

「ええと」

そのとき時間が止まった。

 

わたしは弱い。けれども闘う。

かけがえのない、ちっぽけなわたしという存在のために。

きっとわたしは負けない。負けるわけがない。なぜならこの闘いにおいて、わたしは勝つことしか考えていないから。勝てないのであれば生きている意味がないし、生きながらえるつもりもない。

ほんとうに強い人間とは、生きることを賭けに、すべてを投げうって闘う人間でないだろうか。

 

仮タイトルは「誹謗と無謀、希望のなかの野望。(仮)」。

この小説は、インターネットの誹謗中傷に晒された樫村ひより(22)が、社会に挑んでいく中で強く成長する物語です。ぼくは男性ですが、女性視点から小説を書いてみようと考えました。

トランスジェンダー的な性格はないのだけれど、日本の古典には紀貫之が書いた『土佐日記』があります。これは「男もすなる日記といふものを」という書き出しで、女性になりすまして(というのは失礼かもしれないけれど)書いた文芸作品です。

なぜ、こんなテーマを書こうしたかといえば、女子プロレスラーの木村花さんのニュースを知ったからです。SNSの闇について深く考えさせられたので。

www3.nhk.or.jp

彼女の苦悩にレクイエムを捧げたかった。そして執筆を通じてインターネットのリテラシー、炎上対策、レピュテーション・マネジメント(風評被害に対する法的措置)、COVID-19によって荒廃したSNSと社会、アフターコロナの在り方を問いかけたいと考えました。表層的に木村花さんのエピソードをなぞるのではなく、さまざまな事例を調べて創作として磨き上げたい。それが動機です。

熱く語ってしまいましたが、書くかどうかは不明(苦笑)

もし執筆するならば、最低400字詰め原稿用紙100枚(4万文字)を想定しています。

ちなみにぼくの執筆速度は、ブログの場合2,000文字/時、30文字/分です。1時間にだいたい2,000文字ぐらいの平均速度で文章を書いています。

掲載した「誹謗と無謀、希望のなかの野望。(仮)」のサンプルは1時間程度でさくっと書きました。小説の場合は執筆速度が800文字(1時間に原稿用紙2枚)ぐらいに落ちますが、1ヶ月で10万文字を書いたことが何度かあります。そのときには倍ぐらいの速度でした。納期に追われていたこともありますが。

仕事の場合は事前調査+執筆+校正と推敲、事実確認をあわせて3,000文字相当の原稿で4~7時間でしょうか。仕事が遅い(苦笑)。なんとか長時間机に張り付くことで対応していますが、今後は改善を考えねばなりません。

いま、COVID-19のために滞った業務を整理し、ぶっ倒れた体調を元通りにして、生活を立て直さなければならず「こんなことをやっている場合ではない」状況にあります。しかし、いまやらなかったら永遠にできないのではないか、という危機感をひしひしと感じます。

というわけで、安心して小説創作に没頭できるように、どなたか継続的な仕事をください(笑)。いや、そんな甘いことを言っていないで、仕事は自分で創るものかもしれないですね。